【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「ちょっと待ってください! まだ心の準備ができてません!」
「あ? そんな時間はねぇぞ。さっさと告白しろ、じれってぇな」
別に彼とは両想いになりたいわけではない。
いや・・・それは嘘になるかもしれないが、本当に姿を見ているだけで満足なんだ。
もし告白して、その結果次第ではもうここに来られなくなるかもしれない。
それだけは嫌だった。
・・・でも、恋次の剣幕を見ていると、告白しないわけにはいかなそうだ。
「腹を括れ、加州」
「私は・・・」
「どのガキかは知らねぇが、何も言えねぇままでいいのかよ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺は、何も言わないで後悔したことがある。言って後悔するよりもツライぞ」
言ってしまえば、結果はどうあれ先に進める。
言わなければ、ずっと引きずることになる。
「私は・・・」
どうしよう、そう思った時だった。
“彼、夫、大切な人へ送る、チョコレート”
ここへ来るまでに街で見かけた広告の文句が頭をよぎる。
そうか・・・もうすぐ・・・
「バレンタイン・・・」
もし、告白するならこの日しかないと思う。
そして、この日しかないと思えば、きっと告白できる。
「ばれんたいん? 変な名前だが、そいつがオメーの惚れてる男だな! よし、行け」
「違いますよ、バレンタイン! 好きな人にチョコレートを贈る日です」
「お、おう?」
もしかして、この人はバレンタインを知らないのだろうか。
サッカーを玉蹴りと言ったり、なんだかズレているような気がする。
でも、恋次の言葉には説得力があった。
このまま想いを伝えなければ、きっと自分は後悔をする。