【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「で、お前はなんでいつもここにいる?」
「それは・・・」
いくら自己紹介をしたからといって、この人は他人。
それに職業も分からない、怪しい人だ。
消えることのない警戒心が、恋次に彼のことを話すのを拒む。
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙。
冷たい北風が二人の間に吹いた。
すると、とうとう耐えきれなくなったとばかりに、恋次が口を開く。
「クッソ・・・寒ぃな・・・魂魄の姿だったらどうってことねぇのに・・・」
「こんぱく?」
そんなに言うほど寒いだろうか、と加州は首を傾げた。
確かにまだ2月だが日差しは暖かいし、雪もほとんど残っていない。
それに・・・
あんなに楽しそうにサッカーをしている姿を見ていたら、こっちまで温かい気持ちになる。
「恋次さんは、サッカーが好きなんですか?」
「玉蹴りか? ああ、よくやるぜ。六番隊でも、“こっち”でもな」
「ろ、六番・・・隊?」
「俺が所属している隊だ。しかし、義骸だとあんまり動けねぇんだよ」
いったい、何を言っているのだろうか。
消防団か自衛隊の人なんだろうか。
怪訝な顔をしている加州に気がつかないまま、恋次は羨ましそうな目をサッカーに熱中している少年達へ向ける。
「楽しそうだな」
攻撃的な外見とは裏腹に、その瞳はまるで少年のよう。
本当にサッカーが好きなのだろう。
「恋次さんはいつもここに?」
「ハ? ンなわけねーだろ。先週、加州を見かけてからだ」
「え・・・」
「ここに一人でずっと座っているオメーを見たら、放っておけなかった」
加州はその直球すぎる言葉に、どう反応して良いのか分からなかった。
異性の、しかも初対面の人に“放っておけない”などと言われたことなどない。
軽く顔の火照りを感じていると、髪の毛をワシャワシャと撫でられる。