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【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに

第1章  【流川楓】 君に出会ったその日から




「ママ!!」

それまでずっと握っていた流川の手を離し、トコトコと走っていく。
すると、真っ青な顔で枝を掻き分けていた加州がこちらを振り向いた。


「もみじ!!」


流川がひざの病院から帰ったのが4時。
もみじが見当たらない、パパも探して、と今にも泣きそうな顔で言っていたのを思い出す。
あれからずっとこの調子で探していたのか。

連絡ぐらいしてやれば良かったかな・・・?


「もみじ、良かった・・・心配したよぉ・・・」

もみじとそっくりな目から大粒の涙を流しながら、駆け寄ってきた娘の体を抱きしめる。
それは、さっき流川がもみじにしたムギュー攻撃よりも遥かに強い。

もみじも泣きじゃくりながら加州の肩に顔を埋めた。


「ママ、だいきらいって言っちゃってごめんなさい。ママのこと、だいすきだよ」


「うん・・・うん・・・ママももみじが大好きだよ」


「いっぱい、いっぱい、好きだよ」


「ママはもっと、もっと好きだよ」


やっぱり、泣き虫なのは俺譲りじゃない。
道路の真ん中で抱き合いながら泣いている妻と娘を見て思った。


「おい、おめーたち・・・なんでケンカした?」

「それは・・・」

もみじの髪の毛を撫でながら、加州は恥ずかしそうに口をどもらせる。


「パパにあげるバレンタインチョコのことで、ちょっと揉めまして・・・」

「あ?」


そういえば、今日は2月14日。
下駄箱やらロッカーやらカバンやら、果ては汗だらけのシャツが入ったスポーツバッグにまでチョコレートを押し詰められる、恐怖の日。
プロになってからは、全国から贈られたチョコレートが詰められた段ボール箱を何個も持って帰れと言われる、迷惑な日となっていた。


「もみじは真っ白なチョコレートにしようって言ったの!」

「えー、ママはミルクチョコがいいと思う」

「もみじは白いのが好きだもんっ」

「パパにあげるプレゼントって言ってるでしょ」


・・・なんだ・・・?
要は、オレにどっちのチョコレートをあげるかで揉めてたのか?


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