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[CDC]23の1-1

第1章 人間と国とシフォンケーキ(APH/ロヴィーノ・ヴァルガス)



「そのパネルの生地、俺には見覚えがある」

「あぁ、これですね」

私は頷きました。そうなんです。これもロヴィーノさんからの貰い物でした。「デザインがとっても気に入っているんです。ありがとうございました」

「じゃなくて、俺がプレゼントしたときは洋服だった!ミモレ丈のスカートだっただろ!?」

「はい。とっても素敵な柄だったので、ハサミで切って、作ってみました」

「ハサミで切って!?」

「こっちの方が毎日見れて、毎日ロヴィーノさんのことを思い出せます」


にっこり笑うと、ロヴィーノさんは一瞬きょとんとしたあと、もごもごと下を向きました。


「……一流ブランドだったんだぞ」

「はい」

「お前が今日買ってきた、オレンジ100個分よりも高い金払ったんだぞ」

「存じています。私にも分かるくらいの上等な生地です。だからほら、今は私の生活の中にすっかり溶け込んでいるんです。優秀ですよ、この子は」

パネルに向かって両手を広げたのですが、何やらじっとりとした視線は絡み付いたまま剥がれません。


「去年の誕生日にあげた香水は?」

「よく使っています」

「何に?」

「……トイレの芳香剤に」

「はぁ?」

「あっ、あと掃除機のフィルターにも吹きかけます」

「なんで自分に使わないんだよ!」

こんちくしょーめ!とロヴィーノさんは子供のように地団駄を踏みました。「お前に似合うと思ったからプレゼントしてるのに!」

「すみません」

「先週あげたワインは?」

「あ!それでしたら、ちょうど活躍しているところです!」


あちらで、と私はキッチンのカウンターへ指先を向けました。直後に、はああぁ!?と今日一番の大声が家の中を駆け抜けていきました。


「何なんだよ!あれ」

「ちょうどぴったりだったので……」


駄目でしたか?と、ロヴィーノさんを見上げてから、私はすみませんと頭を下げました。


カウンターの端に控えめに立つワインのボトル。私はそれを、今朝焼き上がったシフォンケーキを冷ます台に使っていたのです。ケーキを型ごとひっくり返して、真ん中の穴の部分をボトルの口に差し込んでおく。そうやって冷やしておくと、ふわふわの食感になるのだと雑誌で紹介されていたからです。


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