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[CDC]23の1-1

第4章 彼女と3バカと鉄板焼き(ワールドトリガー/出水・米屋・緑川)



「”セ・ラ・ヴィ”だよ、なまえちゃん先輩」



赤信号を待ってる間、ふいに駿が口を開いた。”これが人生である”というフランス語なのだそうだ。


「悪いことがあった時に呟くんだよ」

そう言って得意気に教えてくれた。


人生は不幸と偶然の連続ばかり。諦めなきゃいけないことなんて沢山ある。だからいちいち落ち込んでなんていられない。人生はこんなもの、って一言呟くだけでいい。



「駿は素敵な言葉を知ってるね」

素直に誉めると、「覚えた言葉はすぐ使いたがる」「中房だなあ」と17歳共が茶化し始めた。大人げない。冷たい視線を送ってやると、「まぁでも確かに、」と米屋が口の両端をつり上げた。


「運の悪さを嘆くのは時間の無駄だな。ラッキーもアンラッキーも予測できない。水戸黄門も言ってただろ?人生楽ありゃ苦もあるさ、って」

「それ黄門様の台詞じゃないよね。ただのOPテーマだよね」

「人生山あり谷ありだもんな」
出水もすかさず乗っかってくる。「女子のブラとおんなじ」

「さいってー」

「は?なまえ、お前レッド・ツェッペリン知らねーの?」

「そっちじゃねーだろ、バカ」


米屋が出水に突っ込んだ直後、信号が青に変わった。


横断歩道を、4人が連なって歩いていく。


ふいに出水が口ずさむ。誰でも知ってる洋楽曲。米屋も、駿も、そしてなまえも、つられてハミングを重ねていった。


「人生は長い」

米屋が呟く。そう!と出水。「人生はまだまだ続く」


「今日チョコと縁がなかったことくらい、どうってことないよ、なまえ先輩」


3人がいっせいにげらげら笑った。なまえも思わず微笑んでしまう。


セ・ラ・ヴィ。人生はこんなもの、か。


夕暮れに伸びる4つの影を見つめていると、なんとなく、昨日チョコを焦がして正解だったのではないかと思えてしまった。





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