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[CDC]23の1-1

第4章 彼女と3バカと鉄板焼き(ワールドトリガー/出水・米屋・緑川)


「よねやん先輩、ナーイスキャッチ!」

「駿と出水の完璧な誘導のおかげだな」

「だろ?っつーか、まんま想定通りのルートで走ってくれてマジ楽だったわー」


ありがとな?と出水はなまえの頭をぽんと叩いた。駿は連携が上手く機能したことがよほど嬉しかったのか、右手と左手を交互に上空に突き出す謎の舞を披露している。


「さて、どうします?」

米屋も楽しそうになまえに顔を近づけた。「素直に負けを認めて、俺たちに献上します?」


「何を?」と彼女がしらばっくれると、「おやおやぁ?」と出水がとぼけた。


「俺たちに向かって、自信たっぷりに”最高のバレンタインデーをお見舞いしてやる。首洗って待っとけ”っつってたのは、どこのどいつだったかなあ?」

「だって出水が、”お前の手作りチョコなんて想像できんわ”って言ったからだもん」

なまえは頬を膨らませた。


あれは1週間程前のこと。不器用だの料理下手だの茶化されて、売り言葉に買い言葉を続けていたら、いつの間にか3人に手作りチョコをプレゼントする宣言をしていたのである。つまりこれも巧みな誘導。まんまと口車に乗せられたのだ。



「で?」

米屋が尋ねた。「今日1日こそこそ隠れ回って、挙げ句の果てに逃げ帰ろうとしたってことは、作ってねーの?」


「作ったよ。まぁ、作ったっていうか、なんというか……」

 歯切れが悪い。


「正直に話せよ」

「ほら、昨日は13日の金曜日だったから」

「正直に話せって、怒らないから」

「姿の見えない悪魔に邪魔されまして……」

「先輩、言い訳は見苦しいよ」

「………黒焦げになりました」


とうとう白状してしまった。そう、今年は張り切ってお菓子を作った。そして張り切りすぎてチョコから隕石を錬成したのだ。


「ま、んなことだろーと思ったよ」

バカにする風でもなく、出水はさらりと言い放った。「というわけで、プランBだな」

「ん?」

「代替案です」


その言葉の意味を理解するより前に、なまえの両腕はホールドされた。右には弾バカ、左は槍バカ。


「何が始まるんです?」

「デートだよ、先輩」

後ろからは、迅バカの声がする。

「4人でデート?」

「当たり前だろ」

米屋が出水の肩に手を回す。「俺たちの期待を裏切った罪は重いんですよ、お嬢さん」
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