第3章 双子の兄妹とフォンダンショコラ(ハイキュー!!/赤葦京治)
双子の男女がお互いを好きになるのは、異常なことなのかもしれない。
しかしこの件に関して、俺たちは完全に開き直ってしまっている。倫理がどうだの血が濃くなるだの双子であるが故の精神の未熟さだの、咎める言葉を探せばいくらでも出てくるだろう。
だけど、好きになったものはしょうがないんだ。
この主張に反論できる人間なんていないだろう。本能に突き動かされる衝動は止められない。だから頼むから、誰からもとやかく言われない場所で2人きりにさせてほしい。お願いだから。
「お前さ、」
指先同士を絡めながら耳元で囁いた。「右腕がもげたらどうする?」
えっ、と唇が動いたように見えた。なんの話かなんて言う必要はない。現にその後すぐに、「左腕で、描くよ」と吐息と共に答えが返ってきた。
「左腕ももげたら?」
「足で描く」
「足もなくなったら」
「口でペンをくわえて描くよ」
つまり死ぬまで描くというわけか。
納得して、また唇を貪った。そりゃそうだろう。好きなことができないのなら、死んだ方がましだと思う。俺だって、この手でトスを上げる事ができなくなったら。あのコートの中にいられなくなるんだったら、きっと自ら死を選びとる。