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[CDC]23の1-1

第3章 双子の兄妹とフォンダンショコラ(ハイキュー!!/赤葦京治)


「京治、あたし、京治がいないとだめだ」

苦しそうに喘ぐ声がして、首の後ろに手が回される。「健康で文化的な最低限度の生活が維持できません」

「そこはちゃんと自活してください」

「京治は、一生懸命勉強して、良い仕事に就いて私を養って」

「それ、プロポーズ?」


尋ねると、返事はなかった。さっきのお返しとばかりに行き場のない左手をジャージの中に滑り込ませて、彼女の柔らかい腹部を撫でる。小さい甘い声が漏れた瞬間、1階から母親の声が聞こえてきた。


「なまえー?お風呂あいたわよー」


間延びした声。俺となまえの間の空間が一瞬無音になる。ほら、と軽くつついてやると、床に長い髪の毛を乱したままで、「はぁーい」といつもの生意気そうな声を出してみせた。




両親には絶対秘密。



お互い暗黙の了解だった。むしろ背徳感さえ興奮材料になるからたちが悪い。だけど、どんなに中途半端な状態でも、バレそうになったらすぐに止めなきゃいけない。もし俺がなまえを組み敷いているところを、心配性の母親が見てしまったら、きっとあまりのショックで寝込んでしまう事だろう。



「いいとこだったのに」

ぼんやりと呟くと、身体を起こしたなまえが後ろから抱きついてきた。


「お風呂から上がったら続き、いい?」

「泣いたってやめないからな」


突き放すようにそう言うと、なまえはにやりと笑って、「こっちの台詞」と言って部屋から出て行ってしまった。



流れるように波打つ黒髪。昨日よりもっと大人に見える。昨日よりもっと惹かれてしまう。だけど、どうしてだろう。好きになればなるほど、孤独を感じずにはいられない。


残された俺はひとり、熱の収まらない身体を持て余していた。どうしようかと考えていたら、机の上に置かれたスケッチブックが目に止まる。


フォンダンショコラを食べる自分。数分で書き上げた妙に抜け感のあるクロッキー。本当に自分はこんな表情をしていたのだろうか。


手を伸ばして紙をめくると、魔術師が無の空間に浮かんでいた。取り残されたようなローブの下。この人は、今どんな顔をしているのだろう。






- おしまい -
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