第3章 双子の兄妹とフォンダンショコラ(ハイキュー!!/赤葦京治)
「私、絵を描くのが楽しい」
ペンの音と、詰まったような声がする。「だけど苦しい。描きたいものがたくさんあって、描いても描いてもなくならない。私の人生が足りない。時間が足りない」
俺となまえは似ていると思う。外はつんとすましているけど、中はドロドロのぐずぐずだ。自分の欲望を押さえきれない。フォンダンショコラみたいに、熱くて甘い。
「京治の手、綺麗」
ふいに手をとられた。愛おしそうに指先にキスを落とされる。桜色の唇の柔らかい感触、その鼻先が関節にあたると、全身の血が赤く染まる。加速する。
「誰にも渡したくない。私の絵のモデルはいつも京治だから」
求めるような瞳に見上げられて、頭の後ろでぷつんと何かが切れる音がした。スイッチが押された。パチンと弾けた。あぁ、もう無理だな。と判断して、ふらふらとなまえの身体に擦り寄るようにして床に押し倒した。
「あ、京治」
「静かに」
薄い身体の上に覆い被さる。両手の手首を押さえて、首筋にキスをする。
「ん、」
「静かにしろって」
ジャージのファスナーを少しだけ下ろして、鎖骨の窪みに舌を這わせる。骨の出っ張りを甘噛みすると、なまえの身体が反応を示す。止めてなんかやらない。先にけしかけたのはそっちのほうだ。
「なまえ、」
名前を呼んだ。自分でもびっくりするくらいの低い声。やけに煩いと思ったら自分の呼吸の音だった。
きっと今、俺は相当余裕のない顔をしているんだと思う。とてもじゃないけど、部活の先輩たちには見せられない顔。
「なまえ」
もう一度呼ぶ。その次の言葉は頭の中にちゃんとあるのに、喉につっかえて声にできない。だから代わりに唇を重ねた。下唇を舐めてあげると、簡単にそこは開かれる。中に舌をねじ込んで、突っついてくすぐって絡めとって。
「んぅ………っ……」
「なまえ、」
「けい、じ」
音をたてて唇を離せば、求めるように赤い舌が伸びてくる。その舌先に上から唾液を落としてやる。銀色の糸が細く引かれて、またなまえの身体が反応を示す。可愛い。可愛いってなんだ。指先がじんと痺れる。頭がくらくらしてくる。