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[CDC]23の1-1

第2章 受験生と生チョコトリュフ(ハイキュー!!/岩泉一)


———言ってしまおう。

膝の上に置いた両手を握りしめた。


言ったほうがきっといい。そして言うならきっと、今しかない。


モダン・ジャズの帝王、魔術師、あの天才トランペット奏者も言ってたじゃないか。

”終わってしまう前に、終われ。” と。









「言っとくが、遠距離続ける自信がないから別れたいとか言うのは無しな」

「へっ?」


突然の言葉に驚いて振り返ると、岩泉はきょとんとした顔をした。


「……んだよ、そういう話じゃないのか?」

「そうだけど……よくわかったね」

「直感」


ほら、と一粒チョコを差し出された。口を開けると、放り込まれる甘い味。


「お前は空腹になるとネガティブになる」

「………ごめん」

「謝るな」



そう言った岩泉は、無言で残りのチョコを口に運んでいった。その横顔を見ながら、あまりのあっけなさに呆れてしまった。

好きなのに別れる理由がどこにあるのか。きっとそれが彼の言い分なのだろう。私よりもずっと、こいつの思考はシンプルなんだ。






「あのさ、岩泉」

「ん?」

「もしもの話なんだけど、」
軽く鼻をすすって、口元を覆い隠すようにマフラーをずり上げた。「向こうの大学入って、私より好きな人ができたらどうする?」



「え」

岩泉は面食らったような顔をした。でもそれも一瞬のことだった。「その時は、お前と別れる」


「……………だよねぇ」

あーあ、と私は夜空を仰いだ。「イワイズミハジメって、そういう人間なんだよねぇ」



「はぁ?」

「こういう時はね、嘘でもいいから”お前以外の女なんて好きにならない”って言うべきなんだよ」

「先のことなんて分かんねぇだろ。それに、他に好きな人ができたらどうするって聞いてきたのはそっちだろ」

「そうだよねぇ。そういう男だもんね。わかってたよ」

自分の彼氏ながら単純すぎやしないかと笑ってしまう。きっと彼の幼馴染みの及川ならば、私の望む言葉を口にしてくれたことだろう。岩泉は、変に勘が鋭い割りに、女の子の心を読むのは得意じゃないのだ。



「…………嘘を吐いて欲しかったのか?」


彼の声が少し震えていた。顔は強張っているけれど、目だけは真っ直ぐに私のことを見つめてくれてる。


「ううん、逆に安心した」


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