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[CDC]23の1-1

第2章 受験生と生チョコトリュフ(ハイキュー!!/岩泉一)


*







「30分って言ったじゃない」


電気の消えた昇降口。マフラーに顔の下半分を埋めて文句を言えば、「悪かった」とコート姿の岩泉が頭を掻いた。


「全然時計見えてなかった」

「この前みたく終バス逃したらどうすんのよバカ!ほら、早く急いで!」


恋人を急かしながら、うー!とその場で高速足踏み。黒いブーツの先がカチカチと鳴る。


「なにやってんだ?なまえ」

「ストレス!」

「俺のせい?」

「違う!」


彼が靴を履き替えたのを確認してから、私はその大きな背中をぐいぐい押した。早く歩いて欲しいんじゃない。少しでも触れていたかったから。


「ずーーーっと勉強して頭だけ使ってるとさ、なんか体がうずうずしてこない?動きたくなる!」

「まぁ、言われてみればそうかもな……んな押すなって」

「あー!受験ストレス!」

「うるせぇ」

「あそびたい!!!」


叫びながら校舎の外へ彼を押し出す。雪はいつの間にか止んでいて、外は一面銀世界。耳が切れそうなくらい鋭い空気が、肺の中へと侵入してくる。


「頭の疲労と、身体の疲労のバランスがおかしいんだよ。だから運動したくなるんだよねー、岩泉くん」

「知らね」

「バス停まで競走しない?」

「勝手にやってろ」


素っ気ない態度をしているけれど、なんだかんだ言って岩泉は優しい男だ。先ほどから彼の歩幅を小さくさせているのは、なにも凍った道路だけが理由ではない。

隣でわざとゆっくり歩いている私は、いつも彼の優しさを確認している。駄目だと分かっていながら甘えてしまう。誰かがつけた足跡を辿りながら、意味のない愚痴を吐き出していく。


「イライラするよー、ウズウズするよー!勉強なんてもう嫌だよぅ」

「俺だって嫌だ」

「何故私たちは18になるこの時期に、勉強という不快なストレスに身を晒さなければならぬのか」

「俺に聞くなよ」

「神様に聞いてるんだよ。ね、神様?」


顔を上げると、南の空に斜めに3つ星が輝いていた。狩人オリオンの腰の部分。

紺色の夜空に浮かぶその星座は、教科書で見たものよりもずっと明るく、大きくて綺麗なものだった。思わず足と言葉が止まった。


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