第1章 +1
そうして夜が明けて朝が来て。
私も飛雄もそれぞれの部活の練習に励んだ。
そして辺りは薄暗くなって、冷たい風が部活の終わりを告げていく。
その寒い中、体育館の入り口前で立っている見慣れた姿。
「飛雄、お疲れ様。」
「…おう。お前もう大丈夫なのか?」
「うん。おかげさまでね。」
帰り道、制服姿の私とジャージの飛雄。蛍光灯の明かりが2つの影を作ってゆらゆらと揺れている。
そんな中で近くの公園に寄りたいって飛雄を誘ってベンチに座る。
スクバから小さな箱を手に取って飛雄の前に差し出した。
「これ、1日遅いけどバレンタインのチョコ。昨日は…ううん、ずっとお世話になってるよね。ありがとう。」
「おう。ありがとな。」
呆気ない言葉とは裏腹に、飛雄の表情は柔らかく笑ってて。
人はこういうのをズルイって言うのかな。
だってズルいよ飛雄。
恋愛感情は抜きにしてお礼を言いたかっただけなのに。
言葉に出来ないこの気持ちを笑顔を作って誤魔化した。