第1章 +1
その後は少しだけ過去話とかして。
楽しかった時を思い出してまた笑って。
「ここで食っていいか?」
「いいよ。召し上がれ。」
中に入っているのはハートや星型の小さなモールドチョコレート。
残ったチョコを流し入れて固めただけの物だから世間一般的には義理チョコと言うんだろうね。
まあ、だから味はもちろん
「普通のチョコだな。」
うんそう。普通のチョコ。
真正直な感想を言われて思わずグサリと突き刺さってしまったんだけど。
「でも美味い。」
それでも気を遣ってくれてるのかな。
遠回りしない真っ直ぐな言葉が本当に嬉しくて。
「元のチョコが美味しいってことだよ。」
「お前がくれたからだろ。」
だからこの言葉は本当に驚いた。
耳を疑った。
「俺は、お前の事が好きだって言ってんだよ。」
ずっと静かに真剣に話を聞いててくれた飛雄がいつもの調子で口走った言葉を理解できなかった。
「だって、でも、私は
「結構前からだ。お前が人一倍傷付いてんの、俺が一番近くで見てきたからな。守ってやりてぇって思ったんだよ。」
なにか
なにか返事をしようとして。
相応しい言葉が見つからなくて。
景色がどんどん歪んでく。瞳が潤んでく。
飛雄、私は今ここでなんて言うべきなのかな。
一言でも発した途端に声をあげて泣いてしまいそうだよ。
そんな心の声が届いたのかな。
飛雄の真剣な表情が間近に迫るとひんやり冷たい唇を重ねた。
同時に頬を伝う涙は温かかった。