第2章 誰も知らない
「だから、ずっと考え事してたんだよ。だから気付けなかっただけなんだよ。」
そして聞きたかったことが聞けて。
理由を知ったらやっぱり平助君なんだなってほっと安堵の息が通り抜ける。
「あ、でも悪かったな。お前を不安にさせちまって。」
「ううん、いいの。私は嫌われたんじゃないかって思ってたから、理由がわかってよかった。」
「嫌いになんてなるかっての!そもそもその考え事ってのもちず…の事だしちょっと…しかったり…とか…」
だんだん声の力が抜けて上手く聞き取れなくなったりしたんだけど、とにかくまたこうして話せる事が何より嬉しくて。
「やっぱ惚…」
「ほ?」
「…。千鶴が急に女の格好して男と並んでるの見るとむしゃくしゃするんだよ。隊務なら尚更。ほら、現に浪士に絡まれてたし。」
あ…そっか。私の事心配してくれてたんだ。
そして話に夢中になりながら甘酒を口にする。
それが
「ちずっ…それ、オレの。」
平助君が口にしていたものだと気付くのは一口飲んだ後だった。
「え⁉︎あ…えと…ごめんね!間違えちゃった…。」
周りが暗くてよかった。
今の私、絶対に真っ赤だもん。
そして平助も何を考えたのか、
「オレの分、一口減っちまったしな。」
なんて言った後、今度は平助君が私の湯のみを手に取り
「これでおあいこ…な。」
そのまま一口含んだ。