第2章 誰も知らない
「雪村君、協力本当にありがとう。君のお陰で奴らも尾行に気付かなかった。」
「いえ、どうせ私も夕餉の買い出しに行かなくてはいけなかったので。それにこれも。」
「そうか。では急いで着替えるといい。平隊士に見つかるとまずいからな。」
ちょっとした騒ぎはあったけど買い物も済ませて無事屯所に戻ってきた。
手短に袴姿に着替えると早速夕餉の準備に取り掛かった。
それにしても、
「さっきの平助君、どうしたんだろう。」
大根の皮を剥きながら一人ボソッと呟く。
なんだか凄く複雑な表情だったけど、どうしてなのか私にはさっぱり見当もつかない。
「話してたら急に…だもんね。何か悪いことしちゃったのかな。」
思い当たる節は見つからなくて。
でもこのままぎこちない関係が続くのも嫌だし、本人に直接聞いてみよう。
…と、思っていたんだけど。
「平助君!」
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「平助君!」
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「平助君!」
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何度呼んでも彼が返事をする事はなかった。