第2章 誰も知らない
「え?千鶴⁉︎お前そんな格好でどうしてここに…」
ちょっとした騒ぎも収まり、一番最初に聞かれたのはやっぱりこの姿の事だった。
普段男装して行動を制限されている私が女の格好で一人お茶をしていたんだもん。当然だよね。
でもお店の中にもまだ居るんだろうし、この場では説明出来ない。
平助君には屯所に帰ったらちゃんと理由を話せばいいよね。
1人でそんな事を考えながら平助君に代わりの言い訳をしようとしたら山崎さんが茶屋から出てきた。
「雪村君、何やら騒がしかったが大丈夫か?」
「大丈夫です。平助君が助けてくれたので。」
「藤堂さんが?」
「よっ。山崎君も一緒だったのか。」
山崎さんの話によると、残りの面々は裏口から出て行ってしまったらしい。また後日ここで会合するらしいから今日はこの辺でいいだろうという判断に至ったという。
「なるほどな。でもどうして千鶴が女の格好して付いてきてるんだよ。」
「奴らに怪しまれない様恋仲のフリをしてもらったのです。」
あの人達ももういないということで、山崎さんから私の事を説明してくれたんだけど、どうしてか平助君は動揺している様子で。
その後私達に何も言わず踵を返して隊士たちに巡察に戻ると一言。
「ですが組長、我々はそろそろ交代の時間では…」
隊士たちの制止の声も聞かずその場を離れていった。