第2章 誰も知らない
巡察も終わり、屯所に帰ると山崎さんに引き止められた。
市中で怪しい動きがあった為見回りに同行してほしいとの頼みだった。
「でも、巡察中にそんな怪しい人達は見かけなかったのですけど…」
「新選組が徘徊している時間帯にあからさまな行動は取れんのだろう。今この時間帯は検問の任に付き、巡察も人員不足だ。奴らにはうってつけの時間だろう。」
「そうなんですか。わかりました。私に出来ることならばお手伝いさせて下さい。」
丁度夕餉の買い物をしに出掛けようと思っていたし、同行するぐらいならと承諾したけど、ただ一つ心配な事もあった。
「でも変装とかはどうするんですか?私も巡察に付き添っている身ですし顔が破れていると思うのですけど…」
そして私はこの返答に思わず赤面してしまう。
「ああ、その件だが、雪村君には私と恋仲のフリをしてもらいたい。」
確かにあからさまに新選組だと知られてはいけないから変装という点においては最適だと思う。
でも、こ、恋仲のフリをするなんて…は、恥ずかしい。
そんな私を見てか、山崎さんは何故私を同行させるのかという補足を説明してくださった。
「野蛮な浪士集団、世間的な目で見ればそう解釈されるだろう。女子と仲睦まじく歩いていればそう簡単に新選組だとは考えまい。」
そうだ。これはれっきとした任務。
相手に素性を知られてはいけないんだ。
元々既に引き受けているんだし、最後までしっかりやり遂げなきゃ。