第2章 誰も知らない
「愛の誓いの日?」
「そう!この間聞いた話なんだけどね、素敵だなーって思って。」
巡察に同行中、都で偶然出会ったお千ちゃん。少しだけならお茶していいって原田さんが気を遣ってくださって。
そしてこんな話を聞いたの。
外国には恋仲の人と愛の誓いを立てる日があるんだって。
「なんて名前だったかな…。ば、ばれん…たいん?横文字って難しいね。」
熱いお茶とお団子を片手に楽しそうにはしゃぎながら話すお千ちゃんの話を聞いていた。
お千ちゃんって幕府の役人さんともお話しする機会があるみたいで、お知り合いの人も多いから珍しい話もよく耳にするみたい。
でも、慣れない横文字の言葉は全然頭に入らなくって。
「千鶴ちゃんは気になる人とかいないの?」
そして突然そんな事を聞かれて咳きこんじゃって。
「そ、そんな…。確かにいつもお世話になってるけど…」
「あれ?私は新選組の人でとは言ってないんだけどなー。そっかそっか。」
私の反応を見るなり楽しそうに頷くお千ちゃん。
確かにお千ちゃんは新選組の人でとは言ってない。
勝手に勘違いした私が無意識に返答したからこそ本心が出てしまったんだと思う。
「千鶴ちゃん!だったら折角だしこの外国の文化に則って…
「そ、そんなの出来ないよ。」
「んー…じゃあ今後の発展のきっかけになる事でもいいんじゃない?」
ちょっとだけ怖いお千ちゃんの怪しい笑顔が間近に迫っていて、私は為す術なくその提案を聞き入れた。
「贈り物をするの!」