第2章 食べさせて
というのも、私が所属する料理研究部の現在の部員が私一人だから。
最後の部員は春に卒業し、料理研究部なんて名前ばかりの同好会に降格していた。
なんとか調理室を借りることだけはできたけれど、部費もなく自費で活動するには限りがある。
だから、バレー部に材料費を出してもらって、献立を考える上でスポーツ栄養学についても学べているという現状は、二十人近くの人の食事を用意する重労働を差し引いてもおつりが来るくらいで。
寧ろ私がお礼を言いたいくらいというか。
「もう半分バレー部員みたいなものですし。今更遠慮はいりませんよ」
「確かになぁ!合宿も何回もついて来て貰ってるし」
「本当にすまん……。蓮見のメシだと部員のやる気が桁違いでな……」
上機嫌に笑う猫又先生とは対照的に、直井コーチの肩がまた下がる。
中高文化部の私には、運動部の合宿が新鮮で、毎回結構楽しみにしているんだけど。
他校の女子マネージャーさんたちと仲良くなれたのも嬉しいし。仁花ちゃん元気かなぁ。
「蓮見、豚汁おかわり良い?」
「どうぞどうぞ」
律儀に許可を取ってくれた夜久先輩は、豚汁をお玉で掬いながら言う。
「これ、ごぼうが凄く美味しいね」
「ありがとうございます。ごぼうをごま油で焼き色がつくまで焼いたんです。これが豚汁全体に良い味出してくれるんですよー」
豆知識を披露すると、夜久先輩は感心したように頷いてくれた。
「蓮見は本当に良いお嫁さんになるよ」
「やだ、夜久先輩ってば!そんな本当のことを!もっと褒めてくれても良いですよ?」
「いや、そこは謙遜しとけよ。……ま、夜久の言う通り実際すげーと思うよ。偏食で少食の研磨がこんなに食ってるくらいだし」
そう言って黒尾先輩は、隅っこで黙々とおいなりさんをかじっていた孤爪先輩のプリン頭をわしゃわしゃした。
「ちょっと、クロ……。……だって、蓮見の作るご飯は、美味しいし……」
そして、私の様子をちらりと一瞥して、照れたように再びおいなりさんに小さくかじりつく。
ちょっ、孤爪先輩。その唐突のデレは心臓に悪いです……!