第2章 食べさせて
遠い目をしながら体育館に入ると、真っ先に駆け寄ってきたのは同じ一年の犬岡走と芝山優生だ。
「やったー!!メシー!!」
「ご飯、ご飯!」
私のご飯がある日は持参しているマイ食器を持って、目をキラキラさせている。
「オラ、リエーフ!!何で自分は手ぶらで、蓮見さんに運ばせてんだ!!」
黒尾先輩から主将の座を継いだ二年の山本猛虎先輩が、リエーフを叱り飛ばした。
「大丈夫ですよ。調理室から大して距離もないですし。ありがとうございます」
「ひ、ひゃい!」
お礼を言えばカチンコチンに固まってしまった。
何故か敬語。しかも噛んでるし。
黒尾先輩曰く、女の子に免疫がないらしく、接し方がわからないとか。
春から顔を合わせているのだし、いい加減慣れても良いんじゃないかなぁ。
黙って机を出してくれた海信行先輩と福永招平先輩に礼を言って、番重を置く。
「蓮見ちゃん、今日はなにー?」
「おいなりさんと、わかめじゃこのおにぎりと、豚汁です」
「おー!豚汁!!」
「やべぇ、超腹へってきた」
「すっげ、うまそー」
ご飯の匂いを嗅ぎ付けてか、バレー部員たちがわらわらと集まってくる。
「ほら、リエーフ。ご飯は逃げないから早く手ぇ洗ってこい。研磨も」
「うっす!」
「……」
私の後ろから番重を覗きこんでいたリエーフと、マイ食器を手にそわそわしていた孤爪研磨先輩を、すかさず外へ誘導する夜久衛輔先輩。流石音駒のおかん。
黒尾先輩から豚汁の大きな鍋を受け取ると、手を叩いて注目を集めた。
「はーい、皆さんお昼ですよ!手を洗ったら食器を持って順番に並んでくださいねー!!」
わらわら動き出す部員たちを見ながら、腕捲りをしておたまを握る。
さて、もう一仕事だ。