第7章 男はみーんな、狼だ
「リ、リエ……っ」
震える声で名前を呼ぼうとしたが、首の辺りに走った感覚に悲鳴が零れた。
噛まれてる。
首と顎の境目の、柔い場所。ただしそれは、痛みを伴うわけではなく、肌が痺れるような甘噛みで。
身体を強張らせれば、強張り解すように、服越しにそっと薄い腹を撫ぜられた。
触れられた場所から力が抜けて、代わりに下腹部に、何か熱くてドロリとしたものが溜まって行く。
吐息と共に、情けない声が出た。それがあんまり高い声だったから、慌てて奥歯を噛み締める。
……何これ。
知らない。
こんなの知らない!
背筋に走る何とも言えない震えに、頭の中はパニック状態だった。
じわりと、目に涙が滲む。
歪んだ視界の中、緑の瞳を輝かせるリエーフは、何処か楽しそうに見えた。
『男はみーんな、狼だ』
今更になって、黒尾先輩の言葉の意味を理解した。
でも、先輩。これはもう、狼なんてものじゃないです。
圧倒的な力で私を蹂躙し、そして気紛れに弄んでは怯える姿を見て楽しむ。
名前の通り、ライオンだ。
再び降ってくる唇に、抵抗する気はもう残っていない。
腹を空かせた大きな獣に、自ら差し出すように、ゆっくり目を閉じた。