第7章 男はみーんな、狼だ
両手首は掴まれ、いつの間にか足の間に身体を捩じ込まれている。
教室の床にリエーフ自身の身体によって縫い付けられるような格好。
このとんでもない体位をどうにかしようと、私を拘束する身体に意識向けて、
そして、愕然とする。
内腿に触れるのは、しなやかな筋肉に覆われている、太くしっかりした胴体。
手首を掴む手は、大きく節くれだっていて。
いつも何気なく触れていた身体だったのに、まるで別人のように感じた。
こうなって、自分との違いをまざまざと思い知らされて、ようやく気付く。
子供なんかじゃない。
弟なんかじゃない。
私とは全く別の生き物。
力でもって女の私を蹂躙する目の前の彼は、紛れもなく――男だった。
自覚した瞬間、全身の血液が沸騰したように感じた。
目の前の身体は酷く熱くて、触れている場所から溶けてしまいそうだった。
一方で、組み敷かれた自分の身体は、酷く小さく、華奢で。
捲れ上がったスカートから覗く自分の内腿の白さ。
服越しに、呼吸に合わせて上下する膨らみ。
薄暗い教室でぼんやり浮かび上がるそれは、私自身の身体なのに、生々しい女を感じて目眩がした。
目の前の男と比べて、女の身体はなんて頼りなく、扇情的なのか。
猛烈な羞恥に襲われて、狼狽えながら目を離せば、今度はリエーフと目が合う。
涼しげな緑の瞳。
けれど、爛々と輝くそれは、私を焼き付くさんばかりの熱を孕んでいることに気付く。
気付いてしまえば、もう目が逸らせない。
逸らせば最後、頭からかぶりと食べられる。