• テキストサイズ

【CDC企画】ライオンと友情とチョコレート

第7章 男はみーんな、狼だ




 一瞬何が起こったのか、わからなかった。

 空き箱を片そうと伸ばした腕を取られ、引き寄せられた。
 顎を上を向けさせられたと思ったら、真上から覆い被さるように、唇に掠めた感触。

「リエーフ……?」

 呆然と名前を呼べば、近付く緑色。
 かさついて、暖かく柔らかいものが再び唇に触れる。

 ……キス、されてる?

 その事実は理解しても、感情が追い付かない。

 ただただ呆然としていると、私の視界はいつの間にか切り替わっていた。

 普段は教室を明るく照らす埃の積もった蛍光灯、所々薄汚れた染みのついた壁。天井だ。

 じんじんと鈍い痛みを訴える背中。
 自分が床に仰向けに倒れていることに、遅れて気付く。

「え?……え?」

 間抜けにも困惑の声しか出せない私に、リエーフは容赦がなかった。

 先程とは異なり、些か乱暴に重ねられた唇。
 僅かに開いた隙間を、熱く滑ったものに抉じ開けられる。

「んっ、んーー!?」

 驚いて両手でリエーフの胸を叩けば、煩わしげに大きな手に捕らえられ、頭の横で拘束される。

 抵抗も許されずに、ただ与えられる熱に震えるしかなかった。

 しばらくして、離れた唇が銀糸を繋いで、ふつりと途切れる。
 口腔内に残るのは、先程食べさせたトリュフのほろ苦く甘い味。

 濡れた唇を戦慄かせて、喘ぐように空気を求めた。

 心臓の鼓動がうるさくて仕方ない。それは、長い口付けに酸素が足りなくなったから、というだけではない。

/ 42ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp