第6章 恋なんてしなくていい
「嫌いになんてなってない。そうじゃないの。逃げたけど、本当はちがくて」
胸が詰まって、頭の中が熱くて、何が言いたいのか纏まらない。
それでも、何か伝えたくて言葉を重ねる。
「私がいっつも一緒にいるから、リエーフの恋も邪魔しちゃってるんじゃないかと思って。だから」
「蓮見が一緒に居てくれないなら、恋なんてしなくていい」
至極当たり前のように告げられた言葉に、思わず息を忘れて唖然とリエーフを見上げる。
じわじわと、頬に登る熱。
反則だ。そんな言葉は。
でも、リエーフの言い分だと恋をするのにも私と一緒でなくてはならないということになる。
一緒の人を好きになれって?無茶を言う。
それなら他人を挟まずに、私とリエーフが恋をした方が丸くおさまる。
……ん?あれ?
段々自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。
駄目だ、思ったより混乱しているらしい。
「……あれ、でも、リエーフ。あの子は?」
「あの子?」
「昼休みに、告白してた……」
まずいと口をつぐんだ時にはもう遅い。
リエーフが目を丸くして私を見ていた。
「……ごめん、たまたまだったんだけど、途中まで見ちゃって」
「いや、気にしないけど。断ったし」
リエーフはあっけらかんと結果を告げる。
あまりにあっさりしていたものだから、一瞬理解が遅れる。
「……断った?」
「うん、よく知らない奴だったし。付き合ったら蓮見と一緒に居る時間、少なくなると思ったから」
「……」
さっきから物凄い殺し文句の嵐に、私の心臓は過剰に働きっぱなしだった。
いや、他意がないことはわかっているけど。