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【CDC企画】ライオンと友情とチョコレート

第6章 恋なんてしなくていい




 教室のドアが、勢いよく開かれる。


「……居た、蓮見!」
「……え?」

 名前を呼ばれて、心臓が跳ねる。

 リエーフだった。

 何でここに、と口を開く前にずかずかと大股で寄ってくる。
 ただでさえ背の小さな私が座り、目の前で立たれると、飛び抜けて背の高い彼はまるで壁のようだった。

 教室は薄暗い。顔がよく見えなくて、喋らないと知らない誰かみたいで、少し怖い。

「……蓮見」

 伸ばされた手に、思わず肩を跳ねさせた。
 しまったと思った時には遅く、リエーフは手を引っ込めて、それをぎゅっと握った。

「ごめ、そうじゃなくて」
「……蓮見、言って」

 私の謝罪を遮るように、リエーフが言った。

「俺、馬鹿だから。なんかしても、わからない。言ってくれないと、わからない」

 目を見開いた。
 リエーフは、自分のせいだと思っている。

 私が勝手に思い込んで、何も言わず、振り回したのに。

「なぁ、俺何かした?蓮見に嫌なこと。言って。直すから。できるだけ、直すから」

 必死な声。
 それは、何かを恐れるように、か細く震えていた。

「だから、嫌わないで。頼むから」

 一見冷たくも見える顔が、くしゃりと悲しげに歪む。
 それでも、薄暗い中で輝いている緑の瞳は、一心に私だけを映すのだ。

「蓮見に嫌われるのだけは、嫌だ」

 それは、見ている私の方が苦しくなるくらいに、切なくて。

「ごめん!!」

 堪らなくなって、椅子を蹴倒し、目の前の身体に飛び付くように抱きついた。

「ごめんね!リエーフ、ごめん。ごめんなさい!」

 自分を殴りたい気持ちでいっぱいだった。
 リエーフをこんなに不安にさせたことが悔しくて、涙が滲む。

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