第6章 恋なんてしなくていい
放課後の誰も居ない教室。
真冬の夕方は短く、既に沈みかけた僅かな日差しが、教室に暗い影を落としていた。
その中で一人、電気もつけずに机に突っ伏す。
机に置いてあるのは、丁寧にラッピングしたチョコの箱。
「はぁ……」
何度目かわからないため息がこぼれる。
結局、今日一日リエーフと接触する機会はなく、渡すことも謝ることも出来ずに終わった。
犬岡たちに託したバレー部へのクッキーはリエーフにもちゃんと渡っただろうか。
脳内で繰り返されるのは、中庭に居たリエーフの背中と、真っ赤になった女の子の顔。
真面目で大人しそうな、華やかではないけど品のある可愛い子だった。
リエーフは感情表現が素直で、誰にでも別け隔てなく接するから、ああいう大人しい子に密かに想われていることが多いのかもしれない。
「……付き合うのかな」
あの子と。
口に出して、どうしようもなく気分が悪くなった。
胸の奥で蠢いた、自分の醜い感情に。
嫌だと、思ってしまった。
あの子とリエーフを見て。
リエーフの隣に自分以外の誰かが居ることが、堪らなく嫌で。
リエーフの返事が聞こえる前に、踵を返した。
それからは昨日までと同じようにリエーフを避けて、そうして今、誰も居なくなった教室で一人落ち込む。
馬鹿みたいだ。
自分でリエーフと他の女の子たちを近付けようとしておいて、いざそうなってしまえば嫌になるなんて。
「私、何してるんだろう……」
もう一度ため息をつき、手持ちぶさたにラッピングしたリボンをしゅるりと解く。
どうせ渡せなかった、もう必要のないのチョコだ。
自分で食べてしまおうか。
箱を開ければ、トリュフ特有の少しいびつな丸いフォルム。
茶色のそれに指を伸ばした時だった。