第4章 全てはリエーフのため
思いきり頬を張られて目を覚ましたような、気持ちだった。
正しいと思っていた。
私と距離を置くことが、リエーフのためになるって。
でも、違った。
狭い視野を広げようとすること自体は、きっと間違ってはいない。
けれど、リエーフを悲しませてまで、無理にすることではなかったのだ。
理由をつけて逃げる度に、リエーフがどんな悲しい顔をしていたのか、本当は知っていたのに。
私の考えを一方的に、押し付けた。
私だって、リエーフを遠ざけてまで彼氏が欲しいなんて思わない。
それなのに、私は。
「理由もわからずいつも一緒に居たことりに避けられて、一体リエーフがどんな気持ちになると思ってんの!?」
「あ、謝らなきゃ!!」
弾かれたようにガタッと席を立ち上がる。
私の突然の行動に、友人たちは怒りも忘れた様子でぽかんとした表情をさらした。
しかし、店から出ていこうとしたところで正気を取り戻し、慌てて止めに入る。
「ちょ、ちょっと待て!!ストップ!」
「ことりのそういう思いきりの良いところ嫌いじゃないけど、流石に待って!」
「どうどう」と、馬を宥めるように着席を促される。
「もう暗いから。今から学校行くのは流石に止めなさい」
「明日バレンタインなんだから。チョコ渡すついでに謝ったら?」
「……うん、そうだね。そうする」
バレンタインの皆と同じクッキー、そして、リエーフの小テストのご褒美。どちらも作って、渡して。
そして、ちゃんと理由を話して謝ろう。
「……チョコの材料、買ってくる!」
「行ってこい!」
「頑張りなよ!」
友人たちの激励を背中に受け、身を切るような寒さの街へ、飛び出した。