第4章 全てはリエーフのため
「ちょっと、ことり。一体どうなってんの!?」
「……え?」
「え?じゃないでしょ!え?じゃ!何でリエーフのこと避けてんの!?」
バレンタインデー、前日。
連日、リエーフとの追いかけっこを繰り広げ疲労気味な私は、友人たちにあっさり捕獲され、引きずるようにファストフード店に連行された。
萎び気味のポテトを摘まめば、鬼のような形相で詰め寄られる。
「避けてるっていうか……ちょっと距離を置こうかなーと」
登校すればダッシュをかまし、休み時間は適当な理由をつけて教室を離れる。
昼休みは他のクラスの友達の元へ逃げ、放課後はバレー部に少し顔を出してリエーフに話しかけられる前にさっさと帰宅。
私の涙ぐましい努力によって、ここ数日のリエーフとの接触は最低限に押さえていた。
勿論リエーフもめげずに追いかけてくる。
撒いたと思って一息つけば、何処からともなく現れた。私にGPSでもつけてるのか。
捕まりそうになったことも何度となくあったけれど、理由をつけて何とか逃げおおせている。
最初は元気よく私を呼んでいた声が、次第に泣きそうな声になっていけば、駆け寄りたい衝動に駆られたが、そこは堪えた。
今駆け寄ってしまえば、全部が水の泡。全てはリエーフのためなのだと自分に言い聞かせた。
その甲斐あってか、しょんぼりするリエーフを慰めるように話しかける女の子を、ちらほらと見かける。
……やっぱり、私が傍に居たことで、近付きたくても近付けない女の子たちがいる。
その中には、リエーフが好ましいと思う子が居るかもしれない。
あくまで友人の私ばっかりに構うのではなく、広い視野を持って、他の女の子たちにも目を向けてほしい。
そう告げれば、友人たちは頭痛を耐えるような表情で、頭を押さえていた。
「……あっちゃー……。そう来たか……」
「何でそう極端なの…………もっとこう、あるでしょうよ……」
「しっかりしてるようで結構猪突猛進型っていうか……不器用だもんね、ことり……」
「だからって、不自然すぎでしょ……。不自然に思われない程度に上手くやるとかさぁ……」
「無理だよ、ことりだもん……」
「ですよねー……」