第3章 心が浮き立つような恋よりも
「よし、クッキーにしよう」
「何?リエーフのバレンタイン?」
「うん。リエーフだけじゃなくて、バレー部全員にだけど」
「義理枠かい!」
「相変わらずだね、アンタら……。もたもたしてるとリエーフ狙ってる子に、横からかっさらわれるよ?」
「……はい?」
……リエーフを狙ってる子?
思わぬ言葉に耳を疑った。
一方で、友人たちはそんな私の反応に驚いた顔をする。
「ことり、知らないの?アイツあれでちょっと人気あるんだよ?」
「は!?嘘でしょう?」
「本当、本当。ことりに構ってもらえて嬉しそうな顔したり、叱られてしゅんとしてるところとか。デカイし顔が外国人だから、見た目で近寄りがたいけど、結構犬っぽくて可愛いとか。ギャップ萌えですと」
「大半はただ面白がってるだけなんだけど、狙ってるっぽい子も中には居るよ?ことりが居るから、普段は水面下で燻ってるけどね。でも二人とも、ただの友達だって皆に言っちゃってるし。……もしかすると、今度のバレンタインをきっかけに告白されちゃったりもするかもねー」
「リエーフ、が……」
リエーフは、私にとっては手のかかる弟のような存在。
けれど、他の女の子にとっては好意を寄せる対象になりうる。
当たり前のことなのに、何故かそのことに酷く衝撃を受けていた。