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【CDC企画】ライオンと友情とチョコレート

第3章 心が浮き立つような恋よりも




「ほうほう、ことりさんが珍しく難しい顔をして、なーにを見てるのかと思ったら」
「バレンタインですか。いやーおアツいようで」

 料理本から顔を上げれば、同じクラスの友人二人がにやにや笑いながら立っていた。

「うん?バレンタイン?」
「何をすっとぼけてんの。そんな熱心にチョコ菓子のページ眺めておいて」
「ことり、恥ずかしがることはない。リア充爆発しろとも思ってない。勿論。全然。これっぽっちも」
「いたいいたい!肘!肘が脇腹に刺さってるから」

 ぐりぐりと回転を加えてダメージを増やそうとする腕を退ける。

 ……というか、バレンタイン?

 教室の黒板の日付に目を向ける。

「あ、ホントだ」
「え?本気でわかってなかったの?」
「じゃあ何でチョコ菓子のページなんて見てたのさ?」
「リエーフがこの前の小テストの点数良かったからご褒美。チョコ系が良いんだって」

 途端に、彼女たちの表情がガラリと変わる。

「……リエーフが?要求した?」
「……チョコを?この時期に?ことりに?」
「そ、そうだけど……」

 人を一人殺してきたようなその凶悪な表情で迫られて、引き気味に頷く。

 しかし、頷いた途端に犯罪者面は、いやらしいおっさんのそれになった。どのみち女子高生のしていい顔ではない。

「こーれーはー?もしかするともしかしちゃうんじゃないですかー?」
「リア充もどきがついに本物のリア充へ昇格する時が来たか……。感慨深い……。別に羨ましくなんてないけど。いや、マジで」
「いたいいたい!だから肘!さっきからなんなの!?」

 ずきずき痛む脇腹を涙目で押さえながら、何やら勝手に盛り上がる友人たちへ抗議する。

「大人の階段登る友人への過激な洗礼?」
「は!?大人の階段って何!?」
「ナニってナニだろ。って、言わせないでよ!ことりのえっち!」
「えっちって……」
「ことり、リエーフにご褒美のお菓子とか作らなくて良いよ。身体にチョコ塗ったくって突撃すれば何よりのご褒美だよ」
「チョコと一緒に私を食べて?ってか?いきなりチョコプレイとかレベル高いな、おい」
「…………」

 ツッコミは早々に諦め、卑猥な方向へヒートアップしていく彼女らから料理本へ目を落とす。


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