第3章 心が浮き立つような恋よりも
「……蓮見もああいうの羨ましいのか?」
「人のことを一体何だと……。……羨ましいよ。あんな風に一緒に居ると幸せーって相手が居るの、羨ましい」
いつか。
大人になってからでも良い。
私にもあんな相手が出来たら、と思う。
一緒に居るだけで幸せで、ずっとと寄り添っていたいと思える。そんな相手が。
「ふーん……」
「自分で聞いておいて、何でそんなに興味なさそうなの。失礼な」
「……なぁ、さっき言ってたお祝い。甘いのが食べたい」
「甘いの?お菓子?肉とかガッツリ系じゃなくて?」
「うん」
「まぁ……良いけど。どういうのが良いの?」
「うーん……チョコ系」
「良いけど、食べるなら練習終わってからね。急激な血糖上昇は血糖を下げるホルモンの大量分泌を促すから、逆に低血糖になってバテやすくなるんだから」
口うるさく講釈垂れながらも了承すれば、リエーフは顔を輝かせて何度も頷いた。
機嫌良さそうに背中に寄りかかってくる。重い。
無駄に広いそれを軽くべしっと叩き、引き結んだ口元を緩めた。
……まぁ、私にしばらくは恋の相手は必要ないだろう。
今はまだ、心が浮き立つような恋よりも、この甘えたなデカイ子供の世話を焼くくらいで丁度良い。