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苦いお菓子

第1章 苦いお菓子




「別に……俺はそんなの気にしないけど」
「そういう問題じゃないんだよっ。自分の好きな人に、美味しく食べてもらいたいって、普通は思うの! だから、失敗しないように、頑張って作ったんだけどなぁ……」


だんだん暗い声になっていく秋音。
俺は包装を丁寧に取り除き、箱を開ける。
シンプルな焼きチョコ。
香ばしい香りが、ふわりと漂う。
一つ口に含むと、少しだけ苦いが、優しい甘さが口の中に広がった。
確かに、他の人が食べれば、「美味しい」とは言えないのかもしれないし、苦い。
ブラックチョコレートとかそういうレベルじゃない。
だが、あまり甘いものが得意ではない俺にとっては、これぐらいが丁度いい。そう思うことにする。


「……普通に、いいけど」


無意識のうちに口を出た感想に、秋音が目を丸くする。


「え、苦くない!? お世辞は言わなくていいよ!?」
「や、確かに苦いけど……俺はこれぐらいが好きだし。あまり甘いのは苦手だから」
「そ、そっか……」


ほっと胸をなでおろす秋音に、俺も自然と笑みを浮かべていた。
どうやら、俺が一人で空まわっていただけらしい。
無駄な心配だったな。


「あのさ……由島君に嫉妬したんだったら、一応言うけど……由島君は、烏山先生が好きなんだよ?」
「……は?」


衝撃過ぎる事実が秋音の口から発せられる。
あいつが、あの烏山を……? 冗談だと思いたい。


「ここだけの秘密だよ? 内緒だからね」
「あ、あぁ……」


あれだけの女子に囲まれていながらも、あの烏山を好きになるとは、由島の好みがいよいよわからなくなってくる。
だが、まあ……凄く安心した。
その一言に尽きる。


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