第16章 離れていても【虹村修造】
「シュウくん!!」
搭乗ゲートに向かう途中名前を呼ばれた気がした。
想いすぎてついに幻聴まで聞こえるようになったらしい。
「重症だな…俺」
こんなのアイツらに言ったら笑われ者だ。
「━━くん!!シュウくん!!」
また、幻聴………と思いたかったがどうやら空耳でもなく本当に呼ばれていた。
白いジャケットに水色のシャツにスカートをはいて、こちらに走ってくる少女。
俺が今の今まで考えていたアイツが俺の前まで来ると立ち止まった。
「……はぁ…………っ」
「なんで……」
なんでここに来たんだよ。
「シュウくん…」
「……っ。なんで来たんだよ」
無意識に俺はアイツを腕の中に包み込んだ。
言ってることとやってること全然ちげーよ俺。
「シュウくん、私…やっぱり別れるなんて無理だよ」
『━━━別れて欲しい』
卒業間近に俺から別れを告げた。
アイツを想って言ったが俺は後悔しかせず、今日までズルズルと引きずっていた。
「私…会えなくても我慢する。離れてたって…んっ」
俺は言葉を塞ぐように唇を重ねた。
これ以上聞いたら俺はきっとアメリカに行くのをやめてしまう。