第56章 花【黒子テツヤ】
それから何回この場所に桜を見に来たのでしょう。
「2号!えい!!」
「わん!」
桜の花が咲きその下で2号と遊ぶのは幼い子供の姿。
「あんまり走り回ると転びますよ」
「大丈夫だよ~ね、2号!」
「わん!」
2号と楽しそうに遊び見せる笑顔は本当に彼女にそっくりだった。
髪に桜の花びらが付こうがお構いなし。
特別な事なんて何一つしていないのに幸せを感じる。
そんな事を思いつつ本を読んでいると隣で声をかけられた。
「隣良いですか?」
「どうぞ……夏姫」
「お待たせ。パパ、お弁当出来たよ」
隣に座った彼女はあの子は母親であり僕の奥さん。
何年も掛かってしまったけれど僕の蕾はようやく花を咲かせた。
散ることのない綺麗な花を。