第56章 花【黒子テツヤ】
僕にとって夏姫さんは初恋の人でした。
でも、決して手の届かない特別な人。
「じゃあ、黒子くんは誠凛で出来た初めてのお友達だね」
「お友達…ですか」
「うん」
友達
この言葉が心に引っかかった。
僕は夏姫さんの友達以上になれないのでしょうか?
僕は夏姫さんにとって特別な人になりたい。
どうしたらなれるのでしょう?
「あ、見て」
夏姫さんが指差したのは僕が開いていた本。
そこには散り落ちた花びらが数枚あり風で栞のように集まっていた。
「桜って咲くまでに時間はかかるけどその分沢山の花が綺麗に咲いてくれる」
「そうですね」
「やっぱり待ってるのが大事なのかな?」
「え?」
「ううん!何でもない」
「そう…ですか?」
聞き返せなかった。
この時の僕は。
桜の花より早く散ってしまった僕の初恋。