第55章 雪が降ったら
【黒子】
今朝はいつもより寒いと思いながらもカーテンを開けると、その訳がはっきりした。
「雪……ですね」
外は結構積もっていて…2号は大丈夫でしょうか?
僕は早めに家を出て体育館に向かった。
「ワン!」
体育館の近くまで来ると2号の声が…
僕が来たのが分かったのかと思ったのですが…
違いました。
「ふふっ……2号、寒かったでしょ?」
「夏姫さん…もう来てたんですか?」
「テツヤくん!……だって、雪降ってたから2号が心配で…」
「くぅん……」
夏姫さんの腕に抱かれる2号が今日ほど羨ましいと思ったことはありません。
「あれ?夏姫さん、手袋は?」
「ああ…雪だるま作ったら濡れちゃって…」
「そうだったんですか…」
小さな雪だるまの腕には夏姫さんの手袋があった。
「でも…こうすれば…暖かいはずです」
手袋を外し、夏姫さんの後ろから抱きしめるように手を重ねた。
「テツヤくんも冷たいよ…」
「すみません」
これは想定外でした。
「でも、暖かい。テツヤくんがこうしてくれるだけでも」
「そう…ですか?」
急に可愛いことを言われては…
「あれ?テツヤくん急に暖かく…」
「気のせいですよ。僕は元々心も身体も暖かい人間です」
「そう?」
「ワン!」
2号もそうだと言っていますから……ね。
「みんなが来るまでもう少しこうしてましょうか?」