第52章 二人だけの場所【黛千尋】
【黛】
放課後の部活。
行きたくは無いが、足は自然と体育館に向かっていた。
「あら?夏姫ちゃんは来てないの?」
「何か知らない奴に呼ばれて出てったぜ~」
実渕と葉山の話に
「またかよ…」
呟きながら来たばかりの体育館に背を向けた。
「どこに行くんだい?」
「関係ねーだろ…」
「ふっ……」
「チッ…」
赤司の話にもろくに返さず向かったのは屋上。
そこには
「ずっと前から桜庭さんが好きでした!付き合って下さい!」
「……ごめんなさい。気持ちは嬉しいです。でも私…付き合ってる人がいるので」
「彼氏って事?誰?」
「それは…」
「じゃあその彼氏とはどこまで進んでんの?もうヤったの?」
「え……?」
「その様子じゃ、もうヤったのかよ…」
何だよこいつ…
いきなり態度変えやがって…
「彼氏ありで処女じゃねーならもう用はねーし。興味無くなったわ…」
言いたい放題だな…こいつ
相手が屋上から姿を消すとオレの前には夏姫の後ろ姿。
こんな弱々しい背中だったか?
「おい…」
「千尋……私」
「お前は何も悪くねえよ…夏姫はオレのだろ?」
心も身体も…全部。
オレもお前のだ。