第52章 二人だけの場所【黛千尋】
晴れた日の屋上。
お昼休みのチャイムが鳴り、二人分のお弁当を持ち、階段を上り扉を開ける。
そしていつもの場所に向かえばそこには彼の姿。
「千尋」
「何だよ?」
「お弁当…持ってきたよ。たーべよ!」
「もう、そんな時間かよ」
「もうそんなって…あっ!また授業サボったでしょ?」
「オレが居なくたって誰も気付きやしねーよ」
他の人に比べ存在の薄い彼はこっそり抜け出し屋上で本を読む。
「夏姫もサボればいいだろ?」
「無理に決まってるでしょ?」
「知ってる」
千尋の隣に座りお弁当を広げる。
「どうぞ、召し上がれ」
「……頂きます」
私との会話は本を読みながらなのに、ご飯を食べる時だけはしおりを挟み本を閉じる。
「おいしい?」
「まあ…普通」
「またそう言う…素直においしい!って言ったっていいんだよ?」
「はいはい。おいしいおいしい…」
棒読みで返された返事に私は頬を膨らませた。
「ご馳走さま」
でもまあ、何だかんだ言うけどちゃんと食べてくれるから良しとしますか。