第22章 誓いのキス?【氷室辰也】
ステージに出ると皆がこちらを注目する。
足がガチガチで動きません。
「夏姫…落ち着いて」
氷室くんが耳元で言ったが落ち着いてなんていられない。
てゆーか無理です。
氷室くんを呼ぶ女の子の歓声だけはしっかりと耳に入るけど。
ターンしてもうすぐ終わると思った時だった。
「あっ!!」
履きなれないヒールにつまずいた私は前に倒れた。
しかし、痛みはなかった。
「大丈夫?」
「うん…ありがとう」
氷室くんが受け止めてくれたお陰でなんとか助かった。
背後からは女の子の悲鳴やらが飛んできた。
私への嫌味も聞こえてきた。
怖くなり無意識に氷室くんの服を掴んでいた。
「わっ!!」
私は氷室くんにお姫様抱っこされた。
「夏姫…目瞑って」
「え?」
氷室くんに言われた通りに目を閉じた。
すると唇に暖かく柔らかな感触がした。
氷室くんの唇だと分かるまで時間はかからなかった。
「氷室くん…」
「ウエディングドレスと言えば誓いのキスだよね」
氷室くんはそう言うと私を抱えたままステージを後にした。