第27章 【料理】
「旭さんっ、ナイスアイディアっスっ。おい力、そーしろよっ。」
「ちょちょちょ待てよ、絶対嫌って言うって。泣かれたら俺が逆に泣くぞっ。」
「でもその失礼だけど美沙さん押しに弱いとこあるし縁下さんが言ったら意外と。」
山口がおずおずとしかしまったく止める気配がないことを言う。
「山口、今日はお前までどうしたんだ。」
「すみません、ちょっと興味あります。」
力はここでチラっと他の面子に目をやるが日向は美沙が料理かーどんなんかなぁ、などと言っているし影山は話自体に興味がなさそうな様子、清水はやらせてあげたらの一言、澤村は結果報告よろしくなどと笑って言い出す。力はダメだこりゃと思った。
「頼んだ後に部屋から出てこないかもしれない。」
「何だそりゃ。」
田中が首をかしげる。
「嫌な事とか俺に聞かれたら都合悪い事とかがあったら部屋から出ないんだよ。」
「どんだけ隠すの下手なんだっ。」
田中が平手突っ込みを入れる。
「どうせ強制的に入って聞くんだけどな。」
「お前、よく叩かれないな。」
「普通の子なら怒るだろうけど美沙だから。」
力は呟いた。
それはそれとしてみんな好き勝手言うんだからと若干プンプンしながら力が家に帰った後まるで図ったようなことが起きた。
「え、マジか。」
後日の部活の時、木下が言い力は頷いた。
「うん、母さん親戚に呼ばれちゃってしばらく留守するって。俺と親父がいない間は美沙が頑張ることになった。」
「つーことはチャンスじゃん。」
「まーそうなんだけど大丈夫かなぁ。」
「兄貴がそやって心配ばっかしてるからダメなんじゃね。」
木下に言われて力はそうかなぁと呟く。
「無理もありませんけどね、あいつ半々のボケですから。」
月島が言う。
「ああ、そういえば休み時間にスマホケースの紐椅子に引っ掛けてジタバタしてたよ。」
谷地が苦笑する。
「俺は寝ぼけて2年のフロア行きかけてたの見たことある。起きてたら普通なのにね。」
山口も言う。
「まあ縁下、あんまり気を揉むなって。日向にさせるよか安全だろ。」
「ふぇっ。」
「菅原さん、それは俺からはコメントできかねます。」
力はごめんよ日向と思いつつ言う。いずれにせよ仲間達の言う通り心配しても仕方ないのか。それでも力はどうにも不安だった。