第27章 【料理】
その日、部活が終わった時に田中が唐突に言った。
「おい、縁下。妹って料理出来るのか。」
「いきなり何だよ。」
「いや、おめーら妙に仲良いけど妹の手作り弁当とかお前が持ってきてるの見たことねーからよ。あんだけ仲良いならその、たまにはおにーちゃんの為に作ったの、みたいなキラキラのノリがあってもいいだろ。」
「お前は妹に一体どういう夢見てんだ、大体相手を考えろ、美沙だぞ。」
月島がここで口を挟む。
「縁下さん、それ自分の妹は女の子らしからぬおかしな奴って言ってるも同然では。」
「おかしくはないけどいわゆる女の子じゃないし、そういう型にはめられるのが嫌いなのは確かだな。」
ここで谷地がそうですかねぇと呟く。
「その割には美沙さん、結構可愛いもの好きみたいですけど。」
「ああ、そういや田中に押し付けられたキノコのぬいぐるみやったらめっちゃ喜んでたな。」
「一応は女子な訳ですか。」
月島が言ってボソッと面倒くさと付け加える。
「で、結局料理的な意味ではどうな訳。」
興味津々なのか何故か菅原が話を戻す。
「それが、その、苦手みたいでその話をするとテンションがだだ下がりするんです。」
「あの子がテンションだだ下がりてただ事じゃないな。」
「なのであまり触れたくないです。」
「そりゃ大変だわ。」
ここでうーん、と言ったのは成田である。
「ホントかなぁ。」
「お、成田どした。」
面白がった木下が聞く。
「縁下のあの妹さんだろ、ホントに出来ないの。」
「あー、言われれば。」
谷地が言う。
「美沙さん、調理実習の時あまり調理に参加してないんですけどどっちかっていうと他の子がさっさとやっちゃって出番ないみたいな。だから出来るのか出来ないのかよくわかんないかも。」
「おまけにコンプレックス強めだし現にブラコンだし、出来ないと思い込んでるだけとかないか。」
「おい成田、今一瞬NGワード入ったぞ。」
木下が慌てるが成田は今回に限り知らん顔をし、当の美沙の兄である力もそのまま流してうーんと唸っていた。
「試しにやってもらったら、なんて。」
東峰が珍しく言ったので一同はバッと注目し気弱な東峰は慌てる。