第26章 【何かおかしい】
「って、月島が言うてた。」
「ふうん。」
美沙が話し終えると義兄は言った。既に兄妹は帰宅済みであり、美沙の部屋のベッドの上に2人座って語っているのである。最近力は両親の目を盗んでは義妹の部屋に来たり逆に義妹を自室に引っ張り込んだりするようになった気がする。やはり青葉城西の某キャプテンにうろうろされたのが尾を引いているのだろうか。
「まぁ月島はうっすら気づいてたんだろうな、何で俺がこれはめさせたのかとか。」
力は言って美沙の手首のブレスレットを軽くつつく。
「山口は月島が心配してるって言うてたけど。」
「何の心配だろうな。」
力は笑い、どさくさに紛れて美沙を抱きよせる。
「ちょ、兄さん。」
流石の美沙も顔を赤くする。気のせいではない、義兄はやはり隙あらば自分に触れるようになっている。美沙が来たばかりの頃は遠慮していたというのにどうしたのか。
「ゴソゴソしないで。」
力が言う。
「あと、これ邪魔。」
美沙が何か言う間もなく肩から下げているガジェットケースは義兄によって外されてしまい、当の義兄はこれでよしとでも言いたそうな顔で美沙を抱え直す。
「兄さん、最近隙あらば抱っこしてへん。」
「さぁ。」
力はにっこり笑うがそれ以上答えなかった。絶対ごまかされたと美沙は思う。
「言っただろ。」
力はボソリと言った。
「あんなこと言って身動き取れなくなっても知らないぞって。」
ここで力はクスリと笑った。
「自分から飛び込んじゃって、このアホ。」
きょとんとする美沙に力は言った。
「馬鹿って言ったら怒るだろ。」
「もー。」
美沙は膨れる。
「そんなん言うたらこうしたる。」
美沙は言ってぐりぐりと力に顔を擦りつけた。
「なんだっけこれ。」
力が言った。
「俺得ってやつでしかないんだけど。」
義兄は美沙の頭をよしよしする。顔は見えていないが義兄はきっと笑っているだろうと美沙は思う。そして自分はなんのかんの言いながら結局は甘えてされるがままだ。確かに月島の言う通り、自分達兄妹はお互いのことになると何かおかしいのかもしれない。
次章に続く