第24章 【大好き】
寄り道してしかもおしゃべりをしていたのだからもちろんいつもより遅く家に帰った美沙、それよりまだ遅くてなかなか戻らない義兄を今か今かと待っていた。聞きたくて仕方がない、片手につけたブレスレット、義兄がこれをくれた真意は何なのか。きっかけが及川だったのはあれだが何故聞くのか聞き返されたら正直に言う覚悟もあった。隠してもどうせ義兄にはバレてしまうのだから同じだと思う。
いつものように夕飯を済ませ、義母を手伝い、宿題やらなんやらを済ませ、パソコンの前でペンタブを握ったがしかし落ち着かずに塗っては失敗し塗っては失敗しを繰り返していた。
どれくらい経ったか義兄の帰ってくる音がして美沙は部屋から飛び出した。
「兄さん、おかえり。」
「ただいま。」
いつもどおりやりとりしたつもりだが何か変である事を義兄に勘付かれている気がした。
「あの、」
「うん。」
「後でお話が。」
「え。」
「もちろんご飯終わってからとかでええんやけど、その。」
あかん、完全に挙動不審やと美沙は思った。
義兄は案の定不思議そうにしたがいいよ、と言ってくれた。
そうやって落ち着かないまましばらく待ち、とうとう辛抱できなくなってペンタブのケーブルをパソコンから引っこ抜いたところで義兄が手が空いたと部屋にやってきた。
「で、用事は何。」
ドキドキしながらも美沙は片腕を差し出す。
「これ、何でまたくれたん。」
ストレートに言った。
「どうしたんだ、また急に。」
覚悟していたはずなのにいざとなると美沙は一瞬詰まる。
「今日、青城の岩泉さんと及川さんにたまたま会(お)うて」
言った瞬間に義兄が無表情になったのが怖いが今更隠せないと美沙は話を続けた。
「及川さんにこのブレスレットどないしたんって聞かれて兄さんに貰(もろ)た話したら何うかうか手錠はめられてるんやって。意味ようわからんかったから兄さんに聞いた方が早いと思て。」
義兄はハアアアとため息をついた。
「あの人がバレー以外でも勘がいいのは困るな。」
困ったように微笑む義兄、美沙は及川が言ったことが当たっていることを悟った。