第23章 【飾りか枷か】
例によってこれは美沙が知らない事だが及川と岩泉はこんな会話をしていた。
「結局あの腕輪の話は何が言いたかったんだ。」
「難しいことじゃない、つまり烏野の6番君は妹を独り占めしたいんだよ。」
「は。」
岩泉が固まった。
「待てこら、兄貴が妹独占してどうする。」
「烏野行った時聞いた。あの子は元々他人で、最近妹になったんだって。」
「なんだよそのクソ重そうな事情。どーりで言葉が違うたぁ思ったけど。」
岩泉は呟く。
「けどそれにしたって。」
「あの兄妹の場合はたまたま美沙ちゃんが6番君のツボにハマったんだろうね。」
及川は言ってここでクスクス笑う。
「でも仕方ないよ。元は他人でこっちが命令してないのに自ら自分に尽くしてくれる妹だよ。俺だったら絶対離さないね。」
「お前の場合はもっと気持ち悪い事になりそーだな。」
「ちょっとっ、何て言い草っ。」
それは置いといてだと岩泉は流す。
「それでもわかんねーな、腕輪くれてやったくらいでつなぎ止められるもんか。」
「美沙ちゃんには充分だよ。あの子は貰ったものは大事にする、まして大好きなおにーちゃんから貰ったら確実にそれまでよりおにーちゃんの事を意識する。多分6番君もそれわかっててやったんだ、可愛い顔してやるよねぇ。」
岩泉は問うた。
「何でお前にそこまでわかった。」
ここで及川はふうと息を吐く。
「実は美沙ちゃん、メッセージアプリのIDだけ教えてくれてさ、時々やり取りしてるんだ。でも俺ハンカチと一緒に渡したメモ、携帯の番号とメルアドも書いといたんだけどな。」
岩泉はベタな上に気持ち悪いと呟く。
「ひどいなっ。とにかく何回かやり取りしててわかったんだよ。あの子が下げてるスマホケースは亡くなったおばあちゃんが作ってくれた奴で持ってる櫛は本当のお母さんの形見で腕時計は今のお母さんがくれた奴でどれもずっと大事に使ってるって。」
「よくまあ嫌がってた相手にそんだけ語ったもんだな。今日だってたいがい付き合いのいい奴だとは思ったけどよ。」
及川はふふふと笑った。