第23章 【飾りか枷か】
「ってなことが。」
「ほー、気の利く野郎だな。」
「何言ってんの、岩ちゃん。いやむしろ美沙ちゃんはアホの子ですか。」
「何なん、意趣返しですか。」
最初に及川に遭遇した時自分がうっかり言ったことを根に持っているのかと美沙は思う。
「だってそうでしょ、何うかうかおにーちゃんに手錠かけられてるのさ。」
意味がわからず美沙は困惑する。
「ちょっと、うちの兄さんを変な人みたいに言わんといて。」
「気づいてないんだ。」
「及川どうした。他校の女子に嫌がらせするなんておめーらしくねえぞ。」
「いやがらせじゃないよ岩ちゃん、本当のことだよ。」
「あの、」
「美沙ちゃんさ、一日中してろって言われて何でかなくらいは思ったんでしょ。」
そうやけど、と美沙は呟く。
「まあいいや、おにーちゃんに聞いた方が多分早いよ。俺が言っても多分信じらんないでしょ。」
「やっぱり意趣返しやん。」
美沙はムッとして残り少なくなったアイスのコーンをバリバリと齧(かじ)り続ける。
「まーそう怒んないで。ところで美沙ちゃんって、」
及川は笑って話題をすり替え、美沙はわかっていたが何も出来なかった。
「オタクさんなら何か作るの。」
「だからおめーはどこに首突っ込もうとしてんだっ。」
「えっと、」
美沙は言いながら肩に下げたガジェットケースからスマホを取り出す。
「んでそっちはやっぱり答えるんだな。」
岩泉が完全に呆れている。
「別に変なもんは作ってへんつもりなんで。」
美沙は言ってスマホを操作し、動画視聴サービスのアプリを起動、目的の画面が表示されたことを確認してはい、と及川の方にスマホを差し出す。及川と横から覗き込んでいた岩泉が固まった。
「まさかの動画投稿者さんデスカ。」
「おい、烏野6番の妹、おめーは一体何もんだ。」
「言語が関西弁な以外ごく普通の」
「フツーじゃねーよっ、自覚しろ自覚っ。」
「せやけど岩泉さん、ご覧の通り絵は下手で滑らかに動く訳でもなく再生数極小でコメントもろくになく。」
「うるせええええええっ、てめーのネットの基準で語んなああああああっ、いちいち作って上げてるだけで充分だわっ。」