第23章 【飾りか枷か】
それは先週のことである。
「兄さん、おかえり。」
「ただいま。」
美沙はいつもの通り帰ってきた義兄を迎えたのだが
「美沙。」
部屋に戻ろうとしたら義兄に呼ばれた、おまけに手首を掴まれ引っ張られた。
最近の義兄はどうしたのか、なでたりはたいたりする以外でちょくちょく自分に触れる行動に出ている。
「これ、あげる。」
言って片手に載せられたのはビーズのブレスレット、美沙はキョトンとする。
「えと、んと。」
嬉しいのだが理由がわからないので戸惑った。
「お前あまりにも洒落っ気がないからさ。」
力は言う。
「真面目なのは大いに結構だけどそれくらいはしなよ。うちの学校ならそうそう文句は言われないし。」
「あう、そういえば」
美沙はつぶやく。
「何か谷地さんとウロウロしてたらしいって田中先輩から話聞いたけど。」
「ああ、一緒に見てもらった。女の子にも見てもらった方がいいの探しやすいと思ったから。」
「あ、ありがとう。谷地さんにもお礼言うとく。」
美沙は言って利き手でない方の手首に早速つけてみるがその様子を見た力がええっ、と声を上げた。
「どないしたん。」
もらったブレスレットには留め金がついていたが美沙はそれを外さずに手をすぼめてそのまま手首に通してしまったのだ。今までもよくあったことなので気にしていなかった。
「そんまま手通るのか。西谷や影山がお前のことガリガリだとかヒョロヒョロだとか言う訳だ。あいつらには連呼して欲しくないけど。」
「多分大丈夫とは思うけどせっかくもろたのに失くしたらショックやわ。どないしよう。」
「まぁいいからつけときな。出来るだけ一日中。」
美沙はふぇ、と間抜けな声を上げた。
「つまり兄さんそれは学校以外におる時もですか。」
「当たり前だろ。」
いやそれ当たり前やろか、と美沙が疑問を呈するが力には無視された。
「ごめんよ、次はもっとちゃんとはまるのにするから。」
「はて、問題が何かちゃう気がする。」
「いーから。な。」
「う、うん。」
力に気圧されて美沙は頷いた。