第21章 【加速する過保護】
練習が終わってから美沙は下に降りてきてまともに烏養に挨拶をした。
「はじめまして、縁下美沙です。兄がお世話になってます。」
「お、おう。」
烏養が戸惑いまくり、兄妹の顔を交互に何度も見たのは誰にも責められまい。
「全然似てねーな、本当にお前ら兄妹か。何か言葉も違うみてえだし、親戚とかじゃねーのか。」
「兄妹です。」
力がきっぱりといい、後ろで田中と西谷がこそっと縁下がコーチ相手に言い切ったと感心している。
「まあいいけどよ。」
言う烏養の様子から力はこっちが訳ありであると勘付かれたのに気づいていた。でもいいじゃないか、兄妹には違いないんだしと思う。
「もし次こっちよこす時は先生だけじゃなくて俺にも知らせろ、万が一があっちゃ困るからな。」
「はい。」
「お手間お掛けします。」
「いいって。」
烏養は言ってとりあえず話は終わった。
生徒達が去ってから大人組は少しだけ話をしていた。
「先生、縁下の妹つってたあいつ。」
「多分御察しのとおりです、烏養君。」
「やれやれ随分と後輩どもに訳ありが多いな。縁下も大変じゃねえか。」
「彼なら大丈夫ですよ。」
「そうかい。」
「今は何かと美沙さんへの風当たりが強いんで縁下君も気にかけてるんだと思います。過保護はしばらく大目に見てあげてください。」
烏養はうーん、と唸った。
次章に続く