第18章 【及川の突撃】
及川が完全に去ってからもまだ烏野内は混乱気味だった。まず谷地があわわわわわと言い出した。
「えと、えと、青城の主将さんが美沙さん知ってて、んと落し物を届けて、えと何がなんなんでしょうっ。」
「つか大王様最初美沙の事薬丸って言ってたけど薬丸じゃないよな、縁下さんの妹だから縁下美沙だよな。」
「日向ホント人の話聞いてないよね、あいつの前の名前が薬丸だよ、縁下さんも言ってたじゃん。ハンカチに書きっぱなしで本人も忘れてたんデショ、相変わらず半々のボケだよね。」
「つ、ツッキー、縁下さんに怒られるよ。」
「縁下、お前の妹大丈夫か。何か及川に目えつけられてるぞ。」
「大丈夫ですよ、菅原さん。美沙には次も逃げるようよく言っておきます。」
「た、大変だな、縁下。俺だったら妹の事で及川に突撃されたら心臓止まるっ。」
「うーん、しかし及川が縁下の妹にとは意外だなぁ。ああいうタイプは苦手かと思ってたんだが。」
「つか及川さん、どうやって岩泉さんをまいたんだ。」
3年マネージャーの清水を除いた1年と3年が口々に言う。2年はというと
「なあ縁下、良かったのか。」
成田が言った。
「及川さんに妹さんの事情ばれたけど。」
「陰口広めるような人じゃないだろうからもういいよ、美沙が悪い事した訳でもないしさ。」
「おお、縁下が男前だ。」
「龍、そりゃ力に失礼だぞ、いくら意外でも。」
好き勝手をいう田中と西谷、そこへ
「西谷、そもそもはお前がいけないんだぞ。」
木下がボソッと突っ込む。
「いいよ、木下。その代わり西谷、今後一切テスト前は助けないからな。」
普段血気盛んな西谷の顔から凄まじい勢いで血の気が引いた。
「力ああああっ、それは勘弁してくれええええっ、俺死んじまうっ。マジ悪かったっ、すまんっ。」
慌てふためく西谷を力はしばし見つめる。