第18章 【及川の突撃】
「お、及川さんっ。」
まずは中学の先輩のいきなりな訪れに気づいた影山が声を上げた。
「あーっ、大王様っ。」
次に日向が反応する。
「ヤッホー、飛雄ちゃんにチビちゃんも相変わらず無駄に元気そうだねぇ。でも今日は君らに用事じゃないんだ。」
たちまちのうちに今度は田中と西谷がさては潔子さんかやっちゃん目当てかと威嚇行動に出るが澤村に窘められ、今回動揺して動けなくなっている力の代わりに成田と木下がこの愛すべきアホ共を羽交い締めにする。
谷地はええええええっとパニック、清水は谷地を後ろにかばいながら離れたところから事態を静観、山口はオロオロとあたりを見回してばかりで月島は様子がおかしいことに気づいたのか力を後ろから凝視している。東峰は青ざめた顔で硬直、菅原も何か思ったのか力を心配そうに見ていた。
「それにしても困ったね。」
当の及川はそんな烏野の様子をちらっと見ながら困ってないように見える顔で言う。
「昨日その薬丸美沙ちゃんとたまたまお話ししててさ、その後別れた時に落とし物してったんだよね。せめておにーちゃんに届けようと思ったんだけど。うーん、おにーちゃんが君らのチームってのはフェイクだったのかな。おにーちゃんはいるけど実は他の部活とか。」
ここでこのまま流せたら力としては良かったが、残念ながら烏野高校男子排球部は何も考えていない奴らが全部員中約3分の1を占める。
「え、美沙ってあの美沙。」
日向が疑問形で言った。更に彼は及川に余計な情報を与えた。
「それとも違う美沙かな。」
それを耳にした及川の目が光る。なお悪い事に影山も余計な事を付け加えた。
「俺を見んな日向、ボケッ。美沙って名前で俺が知ってんのはあのスマホオタクのヒョロヒョロだけだ。」
「影山お前ね、その辺にしときな。」
菅原が迂闊に喋ることが出来ない力の代わりに言う。しかし及川は既に烏野の連中が澤村も含め何かおかしいと気づいたようだ。
「ちょっとお、君ら何か隠し事してない。主将君まで人が悪いなぁ。まぁいっか、とりあえず薬丸のおにーちゃんはいないみたいだし、他の部当たるのも流石に面倒だし、あのハンカチもらっとこ。」