第15章 【最近の悩み】
「まあ美沙ちゃんの場合はさ、」
菅原が苦笑する。
「人生的に激変があった訳だろ、他所んちの子になったんだから色々あんじゃないの。」
「まあ気ぃ遣ういうんはあるけど、私の場合は望まれて引き取られたみたいやからそない困ってへんとは思います。お父さんもお母さんも大事にしてくれはるし、兄さんはご存知の通りやし。」
美沙はここであ、と呟いた。
「ありましたわ、悩み。」
何だ何だと月島を除く面子が美沙を見つめる。美沙は少し恥ずかしくなって逸らしがちな視線を更に下に落とした。
「兄さんが、」
うんうん、と月島以外が先を促した。
「ちょいちょい過保護な気がする。」
月島以外がぶっと吹いた。
「そーなの。」
日向が聞き、
「あ、でもわかる気がする。」
谷地が苦笑する。
「よく心配してるみたいだもんね。」
「そういえば西谷さんによく妹に触んなって言ってるんだっけ。」
山口が言う。
「後、俺に隠し事すなって言われる。黙って部屋に篭ってたら強制突入してきはる。」
「おお、あの縁下が。」
「後あれじゃないの」
先程まで阿呆くさいとばかりに黙っていた月島が口を開く。
「アンタが昼日中1人で出かけるっつったら俺もついてくとか言われたんじゃなかったっけ。」
「何で月島が知ってるんか疑問やけどそのとーり。あれは参った。」
菅原がブブブと笑いをこらえる。箸を握る手の震えが酷い。
「確かに私は出不精で滅多に外行かんし方向音痴やけどさ。」
「あ、」
ここで影山が何か思い出したのか顔が少し青くなる。
「俺がお前の事聞いたら縁下さんに冷たい目された。」
「影山、アンタ何言うてくれたん。」
「別に悪口言ったんじゃねーよっ、あんまりヒョロヒョロだからちゃんと食ってるのかきーただけだっ。」
「アンタはアホかっ、それは兄さんやのうても怒るわっ。ちゃんと食べさしてもろてるがな現にこのおべんと見てみぃ。」
「痩せの大食いか。」
「谷地さん、影山が珍しく日本語つこてる。」
「美沙さん、それはえっとぉ」
「てめーっ、このスマホオタクっ。」
「言うたな、このアメーバっ、ゾウリムシっ。」
「こら、2人共やめろっ。」
口論になりかけた影山と美沙に菅原が慌てて割って入る。